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2026/10/10

現金払いからETC導入で年間39万円改善——運送業が高速コスト見直しを「今」始めるべき3つの理由

「ETCはもう導入している」——そう答える運送会社は多いはずです。ところが、カードの種類・割引の取り方・請求の集約方法を一度も見直していないとしたら、導入しているだけで活用できていない状態かもしれません。

全日本トラック協会の調査(2025年3月、トラック運送事業者2,973社回答)によれば、高速道路料金を荷主が全額負担している割合はわずか44.6%。半数以上の運送会社が高速代を自己負担しているか、部分的にしか転嫁できていないのが現実です。その一方で、現金払いからETC導入に切り替えるだけで1台あたり年間39.6万円(87社の中央値)のコスト改善が見込めるというデータも存在します(上位25%は年間52万円超)。

さらに2026年度は、首都高速の料金改定・ETC深夜割引の制度改定という二つの大きな変化が重なります。こうした環境変化をコスト増の脅威としてだけ受け取るのか、ETC活用の見直しを進める契機として使うのか——その判断が、年間の収益を数十万円単位で分ける局面に差しかかっています。

本稿では、ETC導入・活用の効果を改めて数字で整理し、制度変化との接続ポイントを実務レベルで解説します。

目次

  1. 現金払いからETC化で「年間39万円」——この数字の内訳を読み解く
  2. 2026年度に重なる「2つの制度変化」——どちらも準備が先行した会社が有利
  3. 高速コストの「自己負担」を減らすために——荷主交渉と内部コスト削減の両輪
  4. 今後の見通し
  5. まとめ

1. 現金払いからETC化で「年間39万円」——この数字の内訳を読み解く

「ETCにするだけでそんなに変わるのか」と感じる方もいるかもしれません。ただ、この改善額は単純な割引率だけで説明できるものではなく、複数の要因が積み重なった結果です。主な構成要素を整理します。

① 割引の取りこぼしがなくなる

高速道路の各種割引——深夜割引・休日割引・平日朝夕割引・大口多頻度割引——はすべてETC利用が前提です。現金払いではこれらがまるごと適用外になります。たとえば深夜割引(現行:午前0〜4時走行で30%割引)を毎日の走行で受けられているかどうかだけで、年間の通行料総額は大きく変わります。

② 首都高専用入口での迂回ロスがなくなる

首都高速では現在、134箇所以上でETC専用運用が進んでいます。現金払い車両はETC専用入口を通行できないため、迂回が必要になることがあります。走行距離・時間・燃料費(ここでは詳細には踏み込みませんが)の損失は、毎日の運行コストに蓄積されます。

③ 通行料の支払い・精算の業務コストが下がる

現金払いでは、ドライバーが立替払いした通行料を経費精算する手間が発生します。1台・1件あたりの工数は小さくても、複数台・月間数十件となれば、経理担当者の作業時間として無視できない規模になります。ETC利用明細に統一することで、精算業務の簡略化と転記ミスの削減が期待できます。

年間39.6万円という数字は、これらの要素が合わさった結果として87社の調査から導かれた中央値です。自社の走行パターン・路線によって上下しますが、「複数台を現金払いのまま動かしている」会社ほど、改善幅が大きい傾向にあります。

2. 2026年度に重なる「2つの制度変化」——どちらも準備が先行した会社が有利

2026年度は、高速道路の料金・割引制度に大きな変化が重なります。それぞれの概要と実務上の注意点を整理します。

首都高速:2026年10月1日から料金改定が確定

2026年7月31日付で事業許可が下り、2026年10月1日(木)午前0時から首都高速道路の料金改定が実施されます。普通車は20km走行した場合で810円から880円(70円増)、上限料金は1,950円から2,130円(最大180円増)になります。

注目すべき点は、中型車・大型車・特大車については2027年6月30日まで現在の料金が据え置かれることです。この特別措置は運送業の負担緩和を意識した経過措置と考えられますが、2027年7月以降は中型車以上の料金も改定される可能性が高く、その時点で再びコスト試算の見直しが必要になります。

今のうちに確認しておくべき実務ポイントは以下のとおりです。

  • 普通車(社用車・ハイエースなど)が首都高を頻繁に使う場合:10月1日以降の月間通行料総額を再計算し、荷主・取引先への料金交渉材料として準備する
  • 中型車・大型車がメインの場合:2027年7月の第2段階改定を見据えた中期シミュレーションを今から行っておく
  • ETCコーポレートカード利用者は、大口多頻度割引の適用状況と月間請求額を改めて確認する

ETC深夜割引:「走行分のみ割引」方式への移行が2026年度以降に

現行の深夜割引(午前0〜4時に少しでも走行していれば全区間30%割引)は、新制度への移行が予定されています。新ルールでは次の2点が大きく変わります。

  • 対象時間帯の拡大:午前0〜4時から「午後10時〜翌午前5時」へ広がる
  • 割引方式の変更:「全区間一律30%」から「対象時間帯に走行した距離分のみを計算して還元」する走行距離ベースへ移行

加えて、現行の即時割引が廃止され、後日還元型への移行が予定されています。これにより、通行料の引き落としタイミングと還元のタイミングにズレが生じます。キャッシュフローへの影響を事前に把握しておく必要があります。

当初2024年度末の実施が見込まれていたものの、システム構築の遅延により2026年度以降へ再延期されており、確定スケジュールはまだ公表されていません。ただし、「いつ実施されても対応できる状態」を今から整えておくことが実務的には合理的です。

具体的には、深夜走行が多い路線・車両について「現行制度での割引額」と「新制度の走行距離ベースでの想定割引額」を試算しておくことで、制度切り替え時の収益インパクトを事前に把握できます。

3. 高速コストの「自己負担」を減らすために——荷主交渉と内部コスト削減の両輪

前述のとおり、高速道路料金を荷主が全額負担している運送会社は44.6%にとどまります。半数以上が自己負担または部分負担という状況で、10月の首都高値上げが重なれば、自己負担分のコスト増はそのまま利益を圧迫します。

この問題への対応は、大きく2つのアプローチに分けられます。

① 荷主交渉:料金根拠を「見える化」して交渉材料にする

国土交通省は2024年3月告示の「標準的な運賃」を従来比で約8%引き上げています。これは運賃交渉の根拠として活用できる公的な指標です。10月の首都高値上げを機に、ETC利用明細から「月間の高速料金総額」を路線別・車両別に集計し、具体的な数字とともに荷主に提示することで、交渉の説得力を高めることができます。

「高速代が上がった」という抽象的な説明より、「○○路線を月○○回走行し、10月以降は月○○円の増加が見込まれる」という数字を示す方が、交渉は進みやすくなります。ETC利用明細の一元管理は、この交渉準備を効率化するうえでも重要です。

② 内部コスト削減:割引の取りこぼしをゼロにする

荷主交渉が難航するケースでも、自社でできるコスト削減の余地は残っています。特に効果が大きい順に挙げると、次のようになります。

  1. 現金払い車両のETC化:最も即効性が高い。各種割引が適用されるだけでなく、ETC専用入口での迂回ロスも解消される
  2. 深夜割引の適用漏れチェック:走行時間帯が0〜4時に一部かかっているのに明細上で割引が反映されていないケースを定期的に確認する
  3. 大口多頻度割引の適用基準の把握:ETCコーポレートカードを使っている場合、月間の請求額・走行実績が割引のしきい値をどの程度下回っているか、または上回っているかを把握することで、割引ランクを引き上げる走行計画が立てられる
  4. カード種別の見直し:クレジット審査が通りにくい車両・事業者でも、協同組合型ETCカードであれば利用できるケースがある。社内に未対応車両が残っている場合はこの選択肢を検討する

4. 今後の見通し

2026年度は、首都高値上げ(10月)・ETC深夜割引改定(2026年度以降・時期未確定)・物流2024年問題の構造的コスト増という三つの圧力が同時期に重なります。これらはそれぞれ独立した話ではなく、運送会社の収益構造に複合的に影響します。

深夜割引の改定については、制度移行後は「走行した時間帯の距離分のみ」に割引が絞られるため、現行制度で恩恵を受けていた「ほんの少し深夜にかかるだけで全区間割引」という運用は使えなくなります。一方で対象時間帯が午後10時まで前倒しになるため、早い時間帯に出発する車両にとっては割引の適用機会が増える可能性もあります。新制度の細部が確定した段階で、自社の走行パターンとの相性を改めて確認することが必要になります。

中型車以上の首都高料金については、2027年6月30日までの据え置き期間が終了したあとに第2段階の改定が控えています。過去の改定サイクル(直近は2022年4月)と比較すると、今後は経済環境や維持費高騰を背景に、改定頻度が上がる可能性は否定できません。2027年以降のコスト試算を今から複数シナリオで持っておくことが、経営の安定につながります。

ETCそのものの普及という観点では、ETC専用入口の拡大が全国で進んでいます。現金払いを残している事業者にとっては、通行できるルートの選択肢が狭まるリスクが年々高まっています。「まだ現金払いで動いている車両がある」という会社は、2026年度末までにETC化を完了させることを実務上の優先事項として位置づけることが望ましい状況です。

5. まとめ

ETC活用は「導入して終わり」ではなく、制度変化に合わせて継続的に見直すものです。現金払い車両1台を切り替えるだけで年間39万円以上の改善が見込めるというデータは、「すでに導入している」会社にとっても、未導入車両が残っていないかを確認する理由になります。

首都高の10月改定を前に、以下の3点を確認することを推奨します。

  • 現金払い車両がまだ残っていないか
  • ETC利用明細から月間の高速料金総額を路線・車両別に集計できているか
  • 深夜割引の新制度移行を見据えた走行パターンの試算に着手しているか

制度変化のタイミングは、コスト構造を一から見直す機会でもあります。値上げの波をただ受け取るのではなく、見直しの契機として活用することが、結果的に競合との差を広げることにつながります。

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