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2026/08/26

深夜割引「走行分のみ」への切り替えで運送業の夜間スケジュールはどう変わるか

「高速道路の深夜割引は0時前にICに入ればお得」——そう覚えている方は多いはずです。ところが、この常識が近い将来、根本から変わります。国土交通省と高速道路各社は深夜割引の適用方式を「走行した時間帯の分だけ割り引く」仕組みへ見直す方向で準備を進めています。2024年問題で労務管理がすでに逼迫している運送業・建設業にとって、この変更は経費と現場スケジュールの両面に直撃します。制度の中身を正確に把握し、今のうちから対策の方向性を検討しておくことが求められます。

目次

  1. 現行の深夜割引はどういう仕組みか
  2. 見直し後の仕組み:「走行した分だけ」割引に変わる
  3. 運送業の夜間スケジュールへの影響:何が変わるか
  4. 経費・コスト管理への影響:経理担当者が押さえるべきポイント
  5. 今後の見通し
  6. まとめ:制度移行前にやっておくべきこと

1. 現行の深夜割引はどういう仕組みか

まず、現行ルールをおさらいします。NEXCO各社が実施している深夜割引は、毎日0時〜4時の間に高速道路上にいれば、その走行全体が30%割引になる制度です。

ポイントは「対象時間帯に1分でも高速道路上にいれば、その日の走行全区間が割引対象になる」という点です。出発が23時台であっても、0時をまたいでいれば全区間に割引が適用されます。この仕組みが、出発を0時直前に合わせる「0時待ち」を生み出してきました。

しかし、0時待ちはドライバーをSA・PAに長時間滞在させ、翌日の走行・業務に影響を与えます。駐車スペースの逼迫や渋滞の原因にもなっており、社会的なコスト問題として指摘されてきた経緯があります。こうした弊害を是正するために、制度の見直しが進められています。

2. 見直し後の仕組み:「走行した分だけ」割引に変わる

見直し後の制度では、適用時間帯が午後10時〜翌午前5時に拡大される一方、割引対象はその時間帯に実際に走行した区間・距離のみになります。

たとえば、23時に乗り翌3時に降りた場合、現行では全区間30%引きですが、見直し後は午後10時〜翌午前5時の間に走行した部分だけが割引対象となります。0時をまたがなくても割引が受けられるようになる一方、深夜帯を走らなければ割引はゼロになります。

この「後日還元型」の仕組みは、ETC2.0の走行履歴データを活用して割引額を算出する設計です。車載器が記録した走行時間・区間のデータをもとに、対象時間帯に走行した分の料金が後から還元される方式が想定されています。つまり、ETC2.0対応の車載器を搭載していることが、新制度の恩恵を受けるための前提条件になります。

適用時間帯の拡大が持つ意味

現行の0時〜4時から、22時〜翌5時へ拡大されることで、従来は割引を受けられなかった「22時台・23時台の出発便」も対象に入ります。夜間早めに出発する配送ルートや、翌朝5時以前に現地入りする建設業の運行計画では、むしろ使いやすくなる側面もあります。

一方で、現行制度では「0時に乗って4時前に降りれば全区間割引」という恩恵を最大限に活用していた事業者は、同じルートでも割引額が変わります。特に0時台の短時間乗降で全区間割引を受けていたケースでは、新制度に移行すると実質的な割引額が減少する可能性があります。

割引率はどうなるか

現時点でNEXCOが公表している方向性では、深夜時間帯全体での割引率は30%を維持する前提で検討されています。ただし、走行した時間帯の按分で計算するため、深夜帯をまたぐ時間が長いほど割引額が大きくなり、深夜帯の走行が短ければ割引も小さくなります。これは現行の「1分でもまたげば全区間30%引き」とは本質的に異なる計算体系です。

3. 運送業の夜間スケジュールへの影響:何が変わるか

この制度変更が最も大きく影響するのは、夜間配送を組み込んだ運行スケジュールです。具体的にどのような変化が生じるか、整理します。

「0時待ち」が不要になり、出発時刻の自由度が上がる

最も明確なメリットは、「0時まで待つ」という行動が不要になることです。22時以降であれば走行した分だけ割引が受けられるため、22時台・23時台に素直に出発できます。これはドライバーの拘束時間短縮にも直結します。

2024年問題(改正労働基準法による時間外労働の上限規制)への対応に追われる運送業にとって、SA・PAでの不要な待機時間が削減できることは、コンプライアンス面でも歓迎すべき変化です。

「割引を最大化する」スケジュール設計の見直しが必要

一方で、現行制度のもとで「0時またぎ」を前提に組まれていたルート・便の発着時刻設定は、根本から見直す必要が生じます。新制度では深夜帯(22時〜翌5時)にどれだけ長く走るかが割引額に直結するため、深夜帯に走行距離が集中するルートほど恩恵が大きく、逆に深夜帯の走行が短いルートでは割引額が目減りする可能性があります。

たとえば、現行制度で「23:55にICに入り翌2:00に降りる」という使い方をしていた場合、全区間30%引きが適用されていました。新制度では22時〜翌5時の走行分だけが割引対象となるため、この事例では23:55〜翌2:00の走行分(約2時間)のみが割引対象となります。走行区間全体が深夜帯に収まっているので割引率そのものは変わりませんが、逆に「23時台に乗って0時前に降りる」ルートだった場合、現行では0時をまたがないので割引ゼロでしたが、新制度では22時以降の走行分が割引対象になります。こうした影響は路線ごとに精緻に試算する必要があります。

ETC2.0未搭載車両は恩恵を受けられない可能性

新制度が走行履歴データを活用する設計である以上、ETC2.0対応の車載器を搭載していない車両は、新しい深夜割引の適用を受けられない可能性があります。現時点ではNEXCOから車載器要件の詳細は正式に公表されていませんが、後日還元の仕組みを実現するためには走行時刻・区間のデータが必要であり、ETC2.0の搭載が前提となる可能性が高いとされています。

車両台数が多い中小運送業では、ETC2.0への全車切り替えにコストと時間がかかります。制度が本格施行される前に、自社の搭載状況を把握しておくことが先決です。

4. 経費・コスト管理への影響:経理担当者が押さえるべきポイント

運行スケジュールの変化は、高速道路料金の経費処理にも影響します。

請求・還元のタイミングが変わる

後日還元型の仕組みでは、走行時に支払う金額(正規料金)と、後から戻ってくる割引額が分離されます。ETCコーポレートカードや協同組合ETCカードを使っている事業者は、月次の請求書で割引が適用された後の金額が確認できますが、後日還元型に移行した場合、請求フローや明細の読み方が変わる可能性があります。利用している法人ETCカードの発行元や協同組合に、制度移行後の請求・還元の仕組みを事前に確認しておくことを推奨します。

路線ごとの割引試算が重要になる

現行制度では「0時をまたぐかどうか」という単純な判断で割引の有無が決まっていたため、スケジュール管理は比較的単純でした。新制度では「深夜帯に何時間走るか」が割引額に比例するため、路線ごとに深夜帯の走行時間・走行距離を把握する必要があります。配車システムや運行管理ツールに深夜帯走行時間の集計機能があるか確認し、なければ手動で把握できる仕組みを整えておくと、経費管理の精度が上がります。

5. 今後の見通し

新制度の施行時期について、NEXCOおよび国土交通省は段階的な移行を前提にしており、2024年度以降の導入を念頭に検討が進められてきました。ただし、制度設計の複雑さやシステム整備の状況から、正式な施行スケジュールは本稿執筆時点で確定していません。最新の公式発表を随時確認することが必要です。

以下に、今後の動向として予想されるポイントを、根拠とともに整理します。

ETC2.0の普及促進策が強化される可能性が高い

新制度がETC2.0を前提とする設計である以上、国土交通省・NEXCOはETC2.0の普及を後押しする施策(助成・補助・車載器交換の費用補助など)を拡充する方向で動くと予想されます。過去にETC車載器の普及期においても補助金施策が講じられた経緯があり、今回も類似した動きが出てくる可能性があります。ETC2.0への切り替えを検討している事業者は、こうした補助施策の情報を見逃さないようにしてください。

深夜帯の交通分散が進めば、SA・PAの混雑緩和につながる

0時待ちが解消されれば、22時〜翌5時の間に走行が分散し、SA・PAの駐車場混雑が緩和される効果が期待できます。国土交通省がこの制度見直しを進めてきた背景にはSA・PA不足問題の解消も含まれており、混雑緩和の効果が確認されれば、制度は予定通り定着していくと見られます。

大口多頻度割引との組み合わせによる影響を注視する必要がある

高速道路を多く利用する事業者にとって、深夜割引とともに重要なのが大口多頻度割引(ETCコーポレートカードやETC協同組合カードを利用した割引制度)です。大口多頻度割引の制度は別途設計されていますが、深夜割引の算出方式が変わることで、両制度の組み合わせによる最終的な割引額が変化する可能性があります。現在大口多頻度割引を活用している事業者は、新制度移行後に実際の割引額をシミュレーションし直すことを検討してください。NEXCOのETCコーポレートカードセンターや、加入している協同組合の窓口に問い合わせると、試算のサポートが受けられる場合があります。

6. まとめ:制度移行前にやっておくべきこと

深夜割引の「走行分のみ」への切り替えは、運送業・建設業のコスト構造と夜間スケジュール設計の両方に影響します。現時点で対策として動いておきたい項目を整理します。

  • 自社車両のETC2.0搭載状況を確認する:未搭載車両が多い場合は、切り替えのスケジュールと費用を試算しておく
  • 主要路線の深夜帯走行時間・走行距離を把握する:新制度での割引額がどう変わるかを事前にシミュレーションする
  • 現行の「0時待ち」ルートを洗い出す:新制度では不要になる待機時間が明確になり、ドライバーの拘束時間短縮策を具体化できる
  • 法人ETCカード・協同組合カードの請求フロー変更を確認する:後日還元型に移行した場合の経費処理の変化を、カード発行元に事前確認する
  • ETC2.0補助施策の情報を定期的にチェックする:国土交通省・NEXCOの公式発表を注視し、補助が出るタイミングで切り替えを進める

制度の詳細・施行スケジュールは今後の公式発表で確定していきます。現段階では「仕組みの変化の方向性を正確に理解し、自社への影響を事前に把握しておく」ことが最大の備えです。正式な施行日が決まった段階で、改めて運行計画と経費管理の見直しを行うための準備を、今から整えておきましょう。

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